まちの活性化におけるアートとは一体何者なのか?
僕は、「異質なるもの」、もっとジェントルに表現するならば「新しい価値を提示するもの」そんな風に定義づけている。だから、それは時に身体表現芸術だったり、視覚芸術であったり、空間であったり、モノであったり、ご馳走であったり、人であったりもする。本来は、そこにあっても不思議ではなかったが近年の日常においては、あまり見かけなくなってしまったもの。或いは、形を変え、居場所を変えてしまったもの。或いは、そこから追い出されてしまったもの。そんな今となっては異質なものが不思議と様々な極をつなげ、連なりを生み、やがて、そこに新しい価値観やムーブメントを創発していくのである。少なくとも、僕はそう信じてる。20周年を迎える大道芸ワールドカップをはじめとした幾つかの試みは確かに人々を変えてきたのである。そんな、幾つかの現場報告をしてみたい。
【講師紹介】
1951年日本、静岡市生まれ。インテリア、ディスプレイ、デザイン・編集会社を経て1985年株式会社シーアンドシー、1991年株式会社シーアイセンターを設立。広義の意味でのデザイン、文化戦略を、21世紀型経営の最重要資源として位置づけ、企業、組合、商店街、地方自治体等の活性化におけるコンサルティング活動を展開。CI戦略、ブランディング、コミュニケーションデザイン、新商品開発、新業態開発、空間プロデュース、イベントプロデュースと、その活動領域は広く、2009年地域・社会の問題をデザイン思考で解決すべく、ソーシャルデザイン研究所を設立。2011年4月からは川根本町文化会館の企画運営に携わる。2011年6月静岡県榛原郡川根本町千頭、山間の里にCafe&Gallery「Ren」をオープン。大道芸ワールドカップin静岡のプロデューサー、静岡デザイン専門学校非常勤講師、静岡市文化振興財団評議員、静岡市教育基本計画策定委員、静岡県文化財団広報アドバイザーなど県や市の公職も多数。
株式会社シーアイセンターweb/http://www.ci-center.net/
【開催概要】
日 時/9月30日(金)19:00~21:00
参加者/42名
【セミナーの様子】
今回の+DESIGNセミナーでは、日常においては、あまり見かけなくなってしまったもの。或いは、形を変え、居場所を変えてしまったもの。或いは、そこから追い出されてしまったもの。そんな今となっては異質なものが不思議と様々な極をつなげ、連なりを生み、やがて、そこに新しい価値観やムーブメントを創発していくことについて事例紹介とともにお話しいただきました。
テーマについて説明をする甲賀氏
ホワイトボードを使い説明をする甲賀氏氏
会場の様子
スライドを使い説明をする甲賀氏
【講義概要】
私は自分のことを「絵を描かないデザイナー」でと思っている。
1985年、投資効果の高いデザイン提供を目的にC&C.corpを設立しました。当時はまだパソコンのない時代で、エアブラシなどを使い、フリーペーパーなどさまざまなものをデザインしてとても儲かりました。経済番組や経済誌などでよく取り上げられました。しかし、ほとんどのデザインが、対処療法的なもので、嫌いなものでも良いものとして売らななければなりませんでした。
40歳となり、私の座右の銘であるリンカーンの言葉「40歳になったら自分の顔に責任を持て」を思い出し、クリエイターとは言えない自分の顔を見て、もう一度クリエイターになろう、自分を変えようと思いました。そこで、デザイン思考で地域社会の問題を解決し、価値を創造することを目的としたソーシャルデザイン研究所を2009年設立しました。
事例として川根茶というお茶を里のお茶との差別化を行いました。川根茶を徹底的に研究を行い、おいしく育つ理由を探りました。茶葉を育てる場所の日照時間が短いため朝霧でミネラルが凝縮されおいしいお茶になることがわかりました。このことから明け方の朝霧と茶畑の写真をポスターに使用し、お茶を売るだけでなく、この風景の場所に行きたいという仕組みをつくりました。
1992年に始まり、今年で20年となる、静岡を代表するイベントの大道芸ワールドカップ。これは、海外のアーティストが多くパフォーマンスのレベルが非常に高いため、とても人気で人々が集まります。不思議なものがまちなかに入ることで風景が変わりました。単に経済的に良いことが都市ではなく、ちゃんと芸術文化が根づいている都市こそが、一番魅力的で私たちがわざわざ行きたくなる都市ではないかと思います。"観光都市"ではない、見るのではなくむしろ幸せを感じる"感幸都市"でなければいけないと考えます。そこに行くことで幸せを感じる都市が重要で、そこには芸術文化が大切であると思います。
デザインはいろいろなかたちや意味がありパワーがあります。色、形だけでなく、デザイン思考を活用することでもっと違う価値観が生まれるのではないかと思います。