わかったつもりでいること、今更言われるまでもないこと
ありふれすぎてだめだとおもっていること、などを
もう一度デザインでリサイクルし、鮮度を与える、
いわばデザインによる編集術についてお話します。
寄藤 文平(アートディレクター、 グラフィックデザイナー、イラストレーター)
1973年長野県生まれ。武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科中退。1998年ヨリフジデザイン事務所、2000年有限会社文平銀座設立。近年は広告アートディレクションとブックデザインを中心に活動。イラストレーターとして挿画の連載や、著作も行う。05年東京ADC賞(JT「マナーの気づき」)受賞。主な仕事に「大人たばこ養成講座」AD(JT)、「きっかけはフジテレビ」マーク(フジテレビ)、「キリンラガービール・キャンペーン」マーク(キリン)、『R25』イラスト(リクルート)など。主な著書に『地震イツモノート』(木楽舍)、『ウンココロ』『ウンココロ手帖』(実業之日本社)、『死にカタログ』(大和書房)など。
【セミナーの様子】
講師の寄藤氏が今まで手掛けてきたイラストや著書を紹介していただきながら、デザインが持つ鮮度について講義していただきました。また、新しいアイディアを生み出すにあたって、アイディアを個人で囲ってしまうのではなく、広くみんなで使うことが出来れば、新しいアイディアはいくらでも世の中に生み出すことが出来るのではないのかということを講義で教えていただきました。
セミナー後の質疑応答では、参加者の質問に対し一つ一つ丁寧にお答えいただきました。
講義の様子講師:寄藤 文平氏
セミナー会場の様子
たくさんの方々に参加していただきました。
講義の様子
楽しくためになる講義をしていただきました。
【講義概要】
私は今までマナーに対する広告のシリーズを10年ほど担当してきました。マナー広告をやりたかったわけではありませんが、たくさんのシリーズを手掛けています。「ポイ捨てをしないで欲しい」などのメッセージを伝えています。ただ、「ポイ捨てをしないでください」と今更ながら言われても当たり前すぎて、まるで子供に言い聞かせているようにも感じてしまいます。当たり前すぎることを普通に言ってしまうと相手の心には響きません。「ポイ捨てをやめてください」というポスターはたくさんあるけど、一目見ただけで自分とは関係ないと考えてしまうのです。なぜ、関係ないと感じてしまうのか?それは、イメージの鮮度が落ちてしまっているからだと私は考えています。
はじめはフレッシュだったものでも見続けることで劣化し、見る人のイメージも劣化してしまう。「ポイ捨てをやめてください」というポスターも劣化しきったイメージだと私は思います。私の仕事は劣化したイメージに工夫をし再びそのイメージに鮮度を与えることだと思っています。
新しい映像を見て、すごいと感じるがすぐに飽きてしまう。この繰り返しは私は好きではありません。捨てられるイメージは山ほどあるでしょう。そんな捨てられたイメージを使うとパクリだと言って怒られることがあります。
たとえば、アイディアのマス目が100あったとします。デザイナーが1個ずつ自分のアイディアだとマス目を埋めていくと100個なんてあっという間に埋まってしまいます。新しいテクノロジーが生まれると、新しいマス目が増えますが、あっという間に埋まってします。埋まってしまうとデザイン業界やグラフィック業界は元気がないと偉い方に怒られます。個人のアイディアだとマス目を囲い込んでいるものをみんなが使えるものとして開放すれば、マス目を組み合わせて新しいアイディアが生まれるのではないかと思っています。そうすることによって、みんなのイメージに鮮度が保たれ、イメージはよりよくなるのではないかと考えています。