デザイン都市のデザイナーVol.23動物に優しい人間に楽しい動物園のデザイン

今回は山阪氏に代わり、昨年6月に就任した天宅ディレクターが登場。「パンダとコアラが全国で唯一同じ動物園内で見られる」と人気の王子動物園を訪ねた。人にも動物にも優れた環境づくりや、展示方法の工夫について動物園ならではのデザインに迫る。


王子動物園 飼育展示係長の山田さんとクリエイティブディレクターの天宅氏。

展示の方法で、王子動物園ならではの特徴や工夫などはありますか?

王子動物園では園内の順路を設定しておらず、好きな順番で自分なりの楽しみ方を味わっていただけます。六甲山や瀬戸内海も見えるなど、神戸ならではの景色を楽しめるのも魅力のひとつ。また、生息地別ではなく同じ種類の動物を一緒のエリアに展示しているのも特徴で、例えばヒグマとツキノワグマのように、同じ地域にはいないクマを見比べることができます。都市型の動物園なので敷地は狭いのですが、その分動物たちを近くで観察できるというメリットも。ガラス張りの展示でも下部をスリット状にするなどして、動物の息遣いや匂いなども感じることができます。また、キリン舎ではお客様がキリンの顔の位置で餌を食べている様子を観察できるスペース「きりんテラス」を作るなど、動物をより身近に感じてもらう工夫をしています。

愛くるしいパンダは神戸でも人気。 コアラには昨年5月、赤ちゃんが誕生した。

 

動物のために工夫した施設や、システムについて教えてください。

動物それぞれのお気に入りの場所や、人から見えない場所をあえて作ったりして動物たちが安心して過ごせる環境を作っています。例えばゾウ舎にはゾウが好きな時に水浴びできるシャワーを取りつけました。大木をイメージしたデザインで、日除けのためのテントも上部に付けています。鼻で器用にボタンを押してシャワーを出すので、お客様にゾウの賢さを知ってもらえます。また、高齢の動物が増えてきたので、動
物のためのバリアフリー化が必要になってきました。高齢を迎えたカバのため、プールに入る傾斜を緩やかにするなど工夫をしました。その他、休園日にも普段と同じようなリズムで生活してもらうなど、動物たちがのびのび過ごせる環境づくりに努めています。その結果、来園者の方々にも楽しんでいただけるのではないでしょうか。


ゾウ舎に取りつけられた巨大シャワー。中央部の赤いボタンを押すと上部からシャワーが出てくる仕組み。ゾウがぶつかっても耐えられる強度を誇る。

これからの動物園に求められることは何ですか?

限られた頭数の中で世代を繋いでいくことが必要です。国内外の他の動物園と連携し、繁殖のための貸し借りをするなど、業界全体で繁殖に取り組んでいます。希少動物に関しては、国内の動物園の中で担当が決められており、王子動物園はアムールトラの保存を担当。動物園全体で協力し、世代を繋ぐための計画を実行しています。

見るだけではなく動物を感じる工夫や、動物にとって優しい空間がそのまま人間にとって楽しい空間になっているユニークな仕掛けなど、動物園の色々なところにデザインを見つける事が出来
ました!(天宅)


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