デザイン都市のデザイナーVol.22南海トラフ地震市民が自ら備え行動するデザイン
今回は、今後30年以内に70%の確率で発生するといわれている「南海トラフ地震」。阪神・淡路大震災を経験した神戸市では、その教訓をいかし現在どのような取り組みが行われているのか。災害に備えるための啓発活動や対策について話を伺うべく市の担当者を訪ねた。
神戸市消防局の尾曲さん、危機管理室の橋本さん、山阪氏、危機管理室の横谷さん。
神戸市では巨大地震に備えどんな対策に重点を置いていますか。
市民自らが考えて備え、判断し、行動する「自己決定力の向上」を目指しています。そのために、まず正しく災害を恐れていただくことが重要と考えています。実は中央区では最高津波水位が3.9m、最短到達時間が91分と想定されていますが、広く知られていません。行政では、皆様が自分たちで判断して行動するために欠かせない情報を提供。その一環として、「くらしの防災ガイド」を全戸に配布しています。また、今いる場所が海抜何mなのか分かるように海抜表示の看板を整備。近くにある避難場所を示すサインの設置も進めています。市民の方には、正しい情報に基づいて、自宅での備蓄方法や家族間の連絡手段の確認、避難経路の確保を行っていただき、災害が発生しても自らの判断で迅速な行動ができるよう備えていただきたいです。
災害の種類に応じて避難場所を決めている。公園や学校など市内随所に避難可能な災害の種類がわかる看板が設置されている。
阪神・淡路大震災の教訓をいかした取り組みはありますか。
神戸市では阪神・淡路大震災をきっかけに「防災福祉コミュニティ」が結成されました。おおむね小学校区ごとに組織され、市内に現在では191団体が存在。“自分たちの街は自分たちで守る”という精神のもと、より市民が中心となり活動しているものです。各消防署がコミュニティを担当し、顔が見える関係の中で支援する仕組みをつくっています。具体的な活動として、津波が想定される地区では浸水の予想到達ラインや緊急待避所となっている建物などを示した、地区独自の防災マップを作成。ほかには、自宅で被災したという想定で避難し本部を設営する訓練を実施している地区や中学校での防災教育に協力をしている地区もあります。各コミュニティで考えた取り組みを実施することで、共助の意識を高めてもらっています。
「自己決定力」を高めるため、普段から心掛けておきたいことは。
神戸市では市民の皆様が正しく判断できるための仕組みを整えています。「ココクル」という独自のサービスでは、何mの津波が来る地点なのかをウェブで知ることができます。「ここは大丈夫」と勝手に判断するのではなく、主体的に海抜を確認するなど、普段から注意をしていざという時に行動できるよう備えて欲しいですね。
防災について学べる「神戸市危機管理センター(SONAEtoU)」。
地震時には、とっさに身を守ることが大切。というわけで、神戸市では今年も「シェイクアウト訓練」を開催。地域で職場で学校で、ぜひご参加ください。詳しくは「神戸 シェイクアウト」で検索。(山阪) |
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