デザイン都市のデザイナー Vol.16遠浅化と健全化須磨海岸がめざすグランドデザイン
今回は電車や駅から見える風景の変化に驚いた人も多いであろう須磨海岸について、みなと総局技術部 海岸防災課の塚本さんと井口さんを訪ねた。今年、遠浅化され美しく再整備された海岸で初の海開きを迎える。その背景と今後について話を伺った。
遠浅に再整備された須磨海岸で。左から山阪氏、管理担当の塚本さん、工事担当の井口さん。
須磨海岸の再整備が完了しましたが、その目的や狙いについて教えてください。
須磨海岸は、阪神間に残る唯一の自然海岸です。近年の治山砂防事業により、砂浜の侵食が著しい状況にあったことから、40年以上も前から離岸堤などを整備し、海岸に砂を入れる養浜事業を行ってきました。JR須磨駅に隣接するなど交通の便もよいため、関西を代表する海水浴場として人気がありますが、その一方でマナーの悪い若者も目立つようになりました。神戸市は「須磨海岸を守り育てる条例」を制定し、騒音や花火の規制をはじめ、喫煙、入れ墨の露出を禁止するなど、モラルの向上に力を入れてきましたが、さらに今回の再整備事業の実施に合わせて、根本的な問題解決をめざしています。今後は、夏の海水浴だけでなく四季を通じて多くの人が訪れる、賑わいのある美しい海岸にしていきたいと思います。
具体的にどのような対策や整備が行われたのでしょうか?
一番の目玉は、海岸が遠浅になったことです。運び入れた砂が流出しないよう沖合の海底に“潜堤”という堤防を設け、砂を入れる工事をしました。この結果、子どもでも安心して泳げるエリアが拡大。砂浜の面積も広くできたことで、ビーチバレーやビーチテニスが楽しめるスポーツゾーンを設けるなど、用途も広がりました。また、ビーチの国際認証であるブルーフラッグの取得をめざして、日本で初めて海岸に下水道を整備。海の家のシャワーやトイレの排水も下水処理できるようになりました。さらに、散歩やジョギングを楽しんでもらえるよう遊歩道を整備したことも大きなポイントです。夜間はフットライトが点灯。遊歩道沿いの階段状の護岸に、カップルが腰をおろして海を眺めるロマンチックな光景も見られます。
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海岸に沿って整備された広い遊歩道。夜間照明によって、夕方以降も訪れる人が増えそう。 |
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浜辺に新しく設けられたトイレには、海側に足洗い場やシャワーも併設。海岸内に下水道を完備したのは非常に画期的なことだという。 |
須磨海岸は今後、どのような場としてデザインされていくのでしょうか?
一年を通して来訪者に親しんでもらえる海岸になることが大切です。5月の「須磨ビーチフェスタ2017」では、須磨海岸の新しい魅力を発見していただけたのではないでしょうか。海や浜の美しい景観に加え、レクリエーションや人々の交流の場として、より多くの人に愛され利用していただける海岸に育てていきたいと思います。
新しく生まれ変わった須磨海岸が7月13日(木)、いよいよ海開きになります。健全化の取り組みにより、イメージを一新する「海の家」にも期待!この夏はぜひ、デザインされた須磨海岸へ。(山阪) |
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