デザイン都市のデザイナー Vol.14安心安全な水を毎日確実に届ける水道のデザイン

今回は生活を支える水について伺うべく、奥平野浄水場へ。安心安全な水の供給や、災害発生時の飲料水の確保のため、水道事業はどうデザインされているのか。また、平成27年末に20年の歳月をかけ完成したという「大容量送水管」のヒミツにも迫る。

山阪氏と神戸市水道局 配水課長の熊木さん。浄水場地下8階の大容量送水管の前で。

安心安全な水を供給するために、日々どのような管理をしているのですか?

まずは水質ですが、3項目の検査を毎日行っています。一番大事なのは残留塩素で、きちんと消毒されているかという部分ですね。その他、法律で定められた水質基準の51項目、農薬類を含む水質管理目標設定項目などを加え、200項目以上の検査を定期的に行っています。 もしも水質に異常が出た際には、オペレーター室の警報が鳴るシステムになっており、職員による24時間体制での危機管理を行っています。また水量の管理も大事な仕事です。気温や天気によって毎日変化する使用量をコンピュータに累積登録。職員が増減の要因を細かく分析した上で、毎日、水の供給量を決めています。ちなみに、1年で使用量がピークを迎えるのは梅雨が明けた7月上旬辺りの暑い日で、逆に使用量が最も少ないのは元日ですね。

震災を経験した神戸として、どのような災害対策を行っていますか?

災害に強い水道をつくるために、20年の歳月をかけ大容量送水管を設置しました。これは直径2.4mの送水管が、芦屋市境から奥平野までの12.8㎞に及ぶ“水道の大動脈”で、土木学会技術賞や水道イノベーション賞大賞も受賞した大事業です。大容量送水管は貯留機能を持っており、渋滞が発生した時もその影響を受けずに市街地内の給水拠点として応急給水にも対応できるほか、配水池などが被災した場合には送水管からの直接配水に切り換えることで、早期通水が可能になっています。また緊急時には遮断弁が閉鎖、市民1人あたり1日3ℓ×12日間分という必要最低限以上の飲料水が確保できます。給水タンク車・消防車への給水など災害時の活動の拠点としても活用でき、復旧期間の短縮に繋がることが期待されています。

深さ50mの立坑、最下階より上を見上げて撮影したもの。

水道管自体が、地震に強いことも重要ですよね。

地震でも管がつぶれない工夫をしています。大容量送水管では全てが真っ直ぐの管ではなく、蛇腹になっている部分を作りました。ちょうど曲がるストローのイメージで、断層のズレで落差が発生しても対応できる構造です。また一般の水道管も震災時に継ぎ目の部分が外れる被害が多かったため、ストッパー付の抜けない構造にしています。

中に人がすっぽりと入ってしまうほど大きな大容量送水管。中央部には凹部分があり、ここが曲がることで断層の落差にも対応できる。

家庭や事業所への送水だけでなく、震災時の給水にも対応できる大容量送水管。この水の幹線上を歩くイベント「水道ジッカンウォーク」が5月28日(日)に開催されます。詳しくは神戸市のHPで。(山阪)


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