デザイン都市のデザイナー Vol.13生物多様性保つ市の環境を守る生態系デザイン

今回は神戸市の豊かな生態系を守る環境局 自然環境共生課を訪れた。ペット用に輸入された動物が野生繁殖、それにより行き場を失った在来種が絶滅の危機に陥るなど、問題はより深刻化してきた。私たちが環境・生物を守るためにすべきこととは。


山阪氏と神戸市環境局 環境保全部 自然環境共生課の村上さん、中西さん。

神戸市に外来種が入ってくる主な経路は、やはり港からの輸入でしょうか?

港町ですから輸入貨物にまぎれて小さな昆虫が入ってくることもありますが、哺乳類・爬虫類の場合はペットとして飼われていたものの野生化がほとんどですね。近年西区では外来種のアカミミガメが異常に増え、在来種のイシガメが住めなくなってきています。アカミミガメは「ミドリガメ」として祭りの夜店などで売られており、繁殖能力が高く、日本には天敵がいないため急増しました。哺乳類だと神戸では圧倒的にアライグマですね。皆さん「かわいい」というイメージをお持ちですが、県下に何万頭も生息し、防除も追いつかないほど深刻化しています。アカミミガメもそうですが、ペットとして購入した時は小さくても、成長するにつれ大きくなり手に負えず「殺すのはかわいそう」「自然の中なら良いだろう」と山や川に放される方がいるようです。

生物多様性を保つために、神戸市ならではの取り組みを教えてください。

建設局が中心となり、北区・藍那に「キーナの森」という生物多様性のシンボル拠点を整備しています。この地域にはキヨスミウツボという希少性の高い植物も生育しており、生物多様性の保全と環境学習拠点としての整備を進めています。神戸市では動植物を希少性の高いものからA/B/Cとランク付けした「神戸版レッドデータブック」を作成しており、キヨスミウツボはBランクに属します。更に珍しいAランクは現在177種、また「今見られない」動植物のリストもあり、59種が選定されています。中にはオオクワガタやタガメなども入っており、作成時「もうこれ以上はこういった種を増やさない」ことを目標に掲げました。また、アカミミガメやアライグマなど生態系に影響を及ぼす外来種は「ブラックリスト」としてまとめられています。

市民団体と共にアカミミガメを捕獲、環境学習も兼ねた防除活動を行っている

生態系維持のために、現在取り組んでいることはどんなことですか?

アカミミガメ対策を例に挙げますと、現在市民団体と一緒に川や池に網を仕掛け、捕獲による生息実態の把握と防除を行っています。今年だけで1500匹以上の防除を行いましたが、まだまだ生態系の回復に繋がる量ではありません。まずは市民の皆さんに外来種について理解していただき、協働の取り組みにしていきたいと考えています。

アカミミガメは成長すると30cm以上にも

外来種の防除はかなり地道な活動ですが、市民を巻き込むための工夫やアイデアがいろいろありました。生態系を守り、自然豊かな神戸をデザインしていく。自然環境共生課の仕事は続きます。(山阪)


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