デザイン都市のデザイナー Vol.10新消防艇、就航海上から神戸を守る水上消防署

今回は、阪神・淡路大震災で発生した長田区の火災でも活躍、海上から神戸の安全を守り続けている水上消防署を訪れた。2017年3月、神戸港開港150年記念として新消防艇「たかとり」が就航する。消防士に伺う、消防艇の歴史や機能・設備とは。

(左から)神戸市消防局 施設課 消防士長 高増さん、山阪氏、神戸市水上消防署消防司令補 鈴木さん、消防司令 貝澤さん。

まずは神戸に消防艇が誕生した歴史と主な活動について教えてもらえますか?

消防が警察の傘下にあった時代、海難救助所という組織があり、1936年に最初の消防艇・初代「たちばな」が作られました。当時は消防ポンプが付いておらず、海難救助が主でした。放水機能が付いたのは1942年に作られた「くすのき」からで、それから2艇体制です。当時は船といえば木造船で非常に燃えやすく、また艀(はしけ)にも人が住んでおり、そういった場所から海に転落する事例の救難にも多く使われていました。現在、出動は年間60~70件、ほぼ8・9割が水難救助で火災というのは非常に少ないです。海上火災以外に沿岸での火災時に出動することもあります。阪神・淡路大震災の時には長田港に接岸して、使えなくなった消火栓に代わって送水ポンプとして機能しました。

水上消防の皆さんは消防士の資格の他に必要な免許があるのですか?

艇を運航する上で必要な海技士免状という資格を持っています。消防艇は基本6人の隊員、そこに水難救助であれば潜水士が4人、現場で保安調整をするための指揮隊員2名が乗り込みトータル12名程で出動します。その中の全員ではないんですが、最低3人は資格を持った隊員が乗っています。

4代目「たちばな」の船内、中央のレバーで放水砲やポンプの操作を行う。

神戸の消防艇ならではの特徴・地形が及ぼす影響などはありますか?

他の自治体とちがい、神戸の消防艇は「いかにも船」というデザインです。それは海上を速く走れる、つまり救難スピードを重視した結果です。船は気象海象というものに影響を受けやすいので、春一番など南風が吹く際には海のうねりが発生するのですが、神戸は人工島が2つあることで壁となり、少しは波が穏やかかなと思います。

新しく就航する消防艇の特徴を教えてください。

消防艇は全てオーダーメイドです。放水量を得るための重いポンプを乗せながら速力もある、その辺りを両立した艇になっています。放水時にも艇が水の勢いに耐え安定するようエンジンをポンプ用と動力用に分けて設けました。高さ10メートルの放水塔をもつ新艇は高所放水が可能で、岸壁に立つ倉庫などの火災にも対応しています。

3月に引退する消防艇4代目「たちばな」。その最後の勇姿を「神戸市消防出初式」でご覧いただけます。1月8日(日)朝10時から、場所は神港第2突堤。開港150年の神戸港へぜひ足をお運びください。(山阪)


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