デザイン都市のデザイナー Vol.9感覚を重視した光の配色と間隔神戸ルミナリエ

今回は阪神・淡路大震災のあった1995年以降、鎮魂の意味をこめて毎年12月に開催されている『ルミナリエ』。そのデザインを始め、プロデュースや会場演出の音楽なども担当するクリエイティブディレクター ダニエル・モンテベルデさんに話を伺う。

神戸ルミナリエ組織委員会のダニエル・モンテベルデさん(左)と山阪氏(右)

神戸ルミナリエはどのようにデザインされ、作られていくのですか?

ルミナリエのデザインは、すべてパソコン上で行なっています。事前に実物でテストできないため、レイアウトや細かな配色はほぼインスピレーションによるものですが、勘や感覚は、人によって違うものです。ルミナリエを見た人達は皆「凄い!」と言ってくれますが、それは感覚的なもので、きっとどこが凄いのかは説明できないでしょう。良い建築家は、設計に「感覚的な要素」をうまく取り入れますが、ルミナリエのデザインでも、私はそういう部分をとても大切にしています。デザインが決まると、それに合ったパーツを選び、イタリアからコンテナで輸送します。組み立ては、専門技術をもったイタリア人8~10人が10日間で作業します。電球の配線は倉庫でパーツごとに実施。電球切れや漏電など様々なテストを行います。

ダニエルさんが考える、神戸ルミナリエの役割はどんなものでしょうか。

去年、私は来場者と一緒にルミナリエを観て歩きました。その中でたくさんの会話を聞いて「人は様々な気持ちでルミナリエを観に来ている」と感じました。例えば震災で家族や友人を亡くした方もいれば、震災当時は生まれておらず意味を理解していない子どももいます。私の希望は「来場者が何か素敵なインスピレーションを受け取り、そしてその気持ちを持ち帰る」ことです。それは平和であったり、愛であったり、幸せであったり、そういうものを感じる機会の一つになって欲しい。神戸ルミナリエは今年22回目を迎えますが、神戸の人々が作った歴史でもあります。地震という悲劇でさえも希望の力で生き抜いた、それは素晴らしい力です。2011年のテーマが「希望の光」でしたが、私はいつのテーマにも「希望の光」を持たせていきたいと思っています。

今年のテーマは「光の叙情詩」ですが、どういったものになりそうですか?

今年のルミナリエは去年のものより更に美しくなっています。今年は紫色を使用し、色彩のバランスにも変化が見られます。バロック様式のエレメンツを多用した新しいデザインです。そして今年は東遊園地の南側が特別。光と音を立体的に楽しめる、まるで映画館のスクリーンのようなイメージになっています。

天井と壁が特徴的なダニエルさんデザインのルミナリエ。密度が高く立体的に美しい、見応えある光を楽しめる。

温かみのある白熱球から省エネを優先させたLEDへという時代の流れの中で、新たなデザインや演出を加えることで、今までで最高の出来映えと言い切ったダニエルさん。今年のルミナリエは楽しみです!(山阪)


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