デザイン都市のデザイナー Vol.8工夫を凝らした献立とシステム食育を担う給食

今回は学校給食をテーマにその歴史や献立作りへのこだわり、管理方法について伺った。現在、神戸市内の小学校と特別支援学校の170校において、8万4千食が提供されている給食。「子どもの食育」としても重要な給食には様々な工夫が凝らされていた。

(左から)山阪氏、神戸市教育委員会事務局 指導部健康教育課の吉岡さん、中西さん、西岡さん

まずは神戸での給食の歴史について教えていただけますか?

元々は貧困児童を対象に明治22年、山形県で始まりました。神戸で始まったのは戦後で、栄養が足りない子どもたちへの脱脂粉乳や味噌汁などの「補食給食」という形でした。やがてパンとシチュー、脱脂粉乳といった「完全給食」が始まったのは昭和25年頃になります。現在では小学校と特別支援学校で170校、8万4千食が提供されています。

献立はどのように決めるのですか?

神戸市内の栄養教諭の献立担当の8名に教育委員会が加わり原案を立てます。食材の調達のためにも4カ月前には原案を立て、学校関係者や保護者、調理士、スポーツ教育協会で構成する「献立作成委員会」で2か月前には献立が決定します。「学校給食運営委員会」で発注などの最終決定をし、ようやく献立が決まります。

献立を決める上で工夫している点などはありますか?

8万4千食にもなると、市内全域が同じ日に同じ献立では食材が集まらないので、5つのブロックに分けて日ごとに献立を変えています。1ヶ月内では皆が同じものを食べている割り振りになりますね。月曜日分は金曜日に食材が届くため、傷まない食材を使用するなど曜日を考慮することも必要です。地元の食材を使うことも大切で、神戸ワイン城で獲れたぶどうを使った「神戸ぶどうゼリー」や規格外の神戸のたまねぎを使った「神戸たまねぎミンチカツ」など
独自の加工品の開発も行っています。また、給食でよく使うたまねぎ、じゃがいも、にんじんに関しては給食用に神戸市内の専用の畑で栽培していただいています。100%とは言えませんが、神戸で収穫できる季節にはそこで獲れたものを使います。給食は歴史が長い分、よく考えられたシステムにはなっていると思いますね。

新しい取り組みや献立の変化があれば教えてください。

噛むことの大切さを伝えるため、固い食品を取り入れた「カミカミ献立」を実施しています。また、家庭で季節感のある料理や郷土料理に馴染みのない子どもも多く、春なら「若竹煮」などの旬のおかずや「たこめし」などの地元郷土料理も献立に盛り込む試みも行っています。給食の内容の更なる充実に向けて今後も検討を続けていきます。


昭和30年代の給食例) パン、ミルク(脱脂粉乳)、カレーシチュー

神戸市での郷土料理の給食例) たこめし、はたはたのからあげ、バチじる、牛乳

栄養バランスだけじゃなくて、地産地消の大切さや郷土料理のこと、野菜の旬、歳時、ときには海外の話題など、さまざまなことが学べる学校給食は、まさに「食べる教材」。
これをずっと続けている献立担当の方の緻密なデザイン力には、完全に脱帽ですね。(山阪)

 

 


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