デザイン都市のデザイナー Vol.7洋菓子の街・神戸職人たちの思いがブランドを支える

今回は「神戸といえば?」の質問に多くの人が答えるであろう「洋菓子」をテーマに、兵庫県洋菓子協会の会長 福原敏晃さんを訪ねた。なぜこれほどまでに神戸に洋菓子が普及したのか?ブランド確立の陰に職人の心意気とデザイン発想があった。


兵庫県洋菓子協会・会長を務める洋菓子店「ボックサン」代表の福原さん(左)と山阪氏(右)

今や洋菓子の街といわれる神戸ですが、その歴史について教えてもらえますか?

来年で150年を迎える神戸港の開港とともに海外から入ってきました。最初はビスケットが作られたと聞いています。明治30年に風月堂が元町で洋菓子店を開業しましたが、当時の日本人はバターやミルクなどの動物性油脂に馴染みがなく、材料もなかなか手に入れられなかった上に、消費するのもほとんどが外国人でした。以降、大正10年にドイツのユーハイム夫妻が神戸に移り住み、バタークリームのケーキを作り始めました。大正12年にはゴンチャロフが開業、モロゾフも大正15年に神戸で創業しました。日本人が甘いものを求め、本格的に食べだしたのは昭和に入ってからだと言われます。今では洋菓子の消費量は神戸が全国ナンバー1、ナショナルブランドと言われるものはほぼ全部神戸発信と言われています。

洋菓子の普及や業界発展のために、何か特別なチャレンジはありましたか?

兵庫の洋菓子協会は今年で70周年、洋菓子協会の中では日本一古い歴史を誇っています。同業者が集まり組合を立ち上げ「皆で洋菓子を盛り上げていこう」という気概が神戸の街にはありました。どんどん職人を育てていこうという意識も高く、とくに戦後は全国から多くの方が神戸に修行に来られ、職人技が各地に広がっていきました。うちの店にもたくさんの方が来られましたよ。洋菓子業界は他の業界と違い、各店がレシピをオープンにしているのも特徴的。洋菓子づくりは、正しい分量や手順を学ぶことがすべてであり、それを広めることが重要なんです。協会で実施している講習会もそういった意識からはじめたもの。ライバル店の職人さんにケーキづくりを教えるなんてことも、珍しい光景ではありません。


季節のハロウィン商品も並ぶ、ボックサン 三宮店の店内

神戸という土地柄、お客さまも洋菓子には厳しいと思うのですが。

神戸は日本一の洋菓子の激戦区です。見た目も内容も価格もという厳しいお客さまがいて、神戸の洋菓子は進化してきたとも言えます。バレンタインデーにチョコを贈る習慣も実は神戸発祥。お客さまに喜んで頂きたい、そのための創意や工夫に終わりはありません。

さすが洋菓子の街というエピソードばかり。食べたくなった!という方にうれしいイベントがあります。スイーツ店が集積する東灘で42の店舗を専用バスで巡る夢のツアー「2016ひがしなだスイーツめぐり」。限定スイーツや特典も。ぜひご参加ください。( 山阪)


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