デザイン都市のデザイナー Vol.6自然との関わり人間らしい生活茅葺き屋根の家
今回は神戸市北区で茅葺きの保存活動を行う阿部洋平さんを訪ねた。ススキなどを刈り取って束にした「茅」で作られる茅葺き屋根、北区には現在も約700棟の茅葺き民家が残る。職人の仕事や、その魅力について、心地よい風が吹く茅葺きの下で伺う。
兵庫県指定重要有形文化財『内田家住宅』(神戸市北区鈴蘭台)の前で、阿部さん(左)と山阪氏(右)
このお仕事を始められたきっかけは?
元々、いつか田舎暮らしをしてみたいとは思いながらも、東京の都市部でサラリーマンをやっていました。ひとつのきっかけになったのが2011年の東日本大震災で、宮城県石巻の茅葺き会社をお手伝いすることになったんです。やがて茅葺きならではの魅力や過ごしやすさに惹かれ、本格的に茅葺きの仕事に就きたいと思い、神戸にやってきました。
茅葺き屋根のカタチや種類って、どこも同じじゃないですよね。
茅葺き屋根の形状は、全国にいろいろな形があります。基本的なものは、寄棟(よせむね)・入母屋(いりもや)・切妻(きりづま)という形式になります。 神戸市では殆ど入母屋形式ですね。寺社等一部には、寄棟造りも存在しています。
茅葺きの家のおもしろさはどんな部分でしょうか?
茅葺きは昔からあるものじゃないですか。なので現代の暮らしにそこまでフィットしているわけではなく「文化的要素から保存していこう」という考えも勿論あるんです。ですが実際に仕事にして関わってみると、茅葺きの家は今生活してみても何ら無理がないんですね。「未来に繋がる」と言うと変な気もするんですが、例えば普通の現代的な住宅を見ても「100年後、自分の住 んでいた家として誇れないんじゃないかな」と思うんです。今は住居の建て方もたくさんあって、その中に一つの選択肢として「茅葺き」があっても良いのかなと。町には町の暮らし方があって、田舎には田舎の暮らし方がある。「田舎に来たぞ!」という時に過ごしたくなるのは、こういう茅葺きの家なんじゃないかと思いますね。

内田家住宅の台所、夏場でも風通しが良くて涼しい

天井裏には葺き替え用に積み上げられた「茅」のストックも
現代社会における茅葺きの役割は何だと思われますか?
「日本人らしさ」と「人間らしさ」を維持し、取り戻し、発展させていく…そういったことができるものなのかなと思います。茅葺きは世界中にあり、海外の人とも話がしやすいので他国の人にも違いを説明しやすい。また、自然との関わりが強く、そこから“人間らしさ”を感じるものなのだと思います。
茅葺き屋根の魅力をはじめ、神戸市北区の魅力が満載の「農す神戸」が9月に発売になります。今回取材させて頂いた阿部さんも登場!ぜひ本屋さんで手に取って、北区の素晴らしさ、住みやすさを再発見してみてください。(山阪)
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