デザイン都市のデザイナー Vol.5水面から空に昇る火と光の芸術品海上花火の魅力
今回は「みなと神戸海上花火大会」を担当する花火師、岸火工品製造所の6代目・良治さん、7代目・洋介さんにインタビュー。神戸の花火大会ならではのこだわりやデザイン、コンセプト…。職人によって生み出される花火の美しさの秘密を垣間見る。
『みなとこうべ海上花火大会』ポスター前で(左から)山阪氏、岸火工品製造所の岸 洋介さん、岸 良治さん。
岸火工品製造所さんでは長年に渡り、花火を作られていますよね。作り始めた頃から製法等は変わっているのですか?
うちは130年くらいの歴史があって、古くは明治の頃から記録が残っています。その頃からずっと花火をやっていますね。製法はやはり、どんどん新しくなっています。40年位前に花火の事故が多発した時期があり、その頃に日本花火協会が中心となって、危険性の高い薬品を廃止して代用薬品に移行したり、配合や技術の共有を行ったんです。それまではそれぞれの業者で技術や情報量に偏りがあったのですが、危険性などの共通認識をもつことで事故が減りました。9割方の作業は未だに手作業なんですが、徐々に機械化も進められてきています。また、手打ちという作業は5年を越えた職人でないと行ってはいけないという安全規定も生まれました。
神戸の花火大会ならではのアイデアや工夫などはありますか?
陸上ではなく海上なので船を浮かべて打ち上げるんですが、陸上では禁止されている“斜めからの打ち上げ”が行えるんです。これは大きなメリットで、海上全体を埋め尽くす演出ができます。また、海上は燃える心配がないため、星を大きく作ったり燃焼が遅いものを入れて花火をあえて火が付いたまま、海上に落とすということもできます。昨年は赤の輪花火でポートタワーの花火を打ち上げましたが、今年は開港150周年に向けたプレイベントとして「I LOVE WATERFRONT」「I LOVEJAZZ」といった形で、海外の方に「神戸の良さ」を発信することをテーマにしています。ジャズに関しては「音楽を流せない神戸の花火大会の中でどう表現するか」、腕の見せ所になりますね。

海上花火ならではの演出で、滝のように海面まで垂れ落ちる花火

手打ちの作業ではひとつひとつ丁寧に火薬を詰めていく
花火業界でもトレンドの花火とか、流行の形とかはあるんですか?
ありますね。今は「マジックボタン」という、人間が見えないレベルまで光を抑えることで、光がズレて動いているように見える花火がトレンドです。他にも「立体ハート花火」という、点状ではなく立体的にハートを象った花火も新しく作っています。今回、神戸の花火大会でも打ち上げる予定ですよ。
お話を伺う前はどこの花火もそれほど変わらないだろうと思っていたのですが、海上の花火大会ならではの打ち上げ方や神戸オリジナルの仕様があることに正直驚きました。音楽などの演出に頼らない分、花火大会本来の魅力が味わえる要素が満載ですね。( 山阪)
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