デザイン都市のデザイナー Vol.3自然の力を蓄え毎夜光り続ける神戸のシンボル

今回は、神戸市街地の背後を彩る山の電飾「市章山」「錨山」について。神戸の夜景の中でもシンボル的存在の電飾は阪神淡路大震災当時も点灯し続け、市民から「復興への希望の光」と呼ばれた。管理を担当される道木さんに話を伺う。

(左から)神戸市森林整備事務所 副所長の藤本さん、山阪氏、所長の道木さん。錨山電飾をバックに。

まずは電飾を始められた経緯についてお聞かせいただけますか?

最初は錨山からだったんですが、これは明治36年に明治天皇が神戸港を見に来られる「観艦式」に合わせて作られました。当時は電飾ではなく、錨の形に松の木を植えたそうなんですが、前段階では子ども達が旗を持って並んだとも伝わっています。市章山に関しては明治40年に神戸港の着工記念で同じように松の木を植える形で始まりました。この後、現在は残っていませんが菊水を象った菊水山というのも一時期はあったようです。やがて、松の木から電飾になったのが昭和8年。これは「第1回神戸みなとの祭」の前後1週間のみ点灯する形で、市章山から始まりました。昭和42年には開港100年を記念し毎日電飾を開始。昭和56年のポートピア博覧会時に、太陽光と風力発電による自然エネルギーでの点灯に移行しました。

道木所長のおすすめスポット 鯉川筋から見る「錨山」

自然エネルギーを利用した電飾としてはかなり早いですね。

ポートピア博覧会の一環としてやっておりましたので、当時の神戸市内でも先進的な特殊な取り組みの一つだったのではないかと思います。自然エネルギーを利用しているおかげで、阪神淡路大震災の当日の夜にも点いていました。それが意図したわけではありませんが、結果として希望の光に見えたという話も伺いますね。

現在は太陽光のみを使用しているが、昭和56年当時、自然エネルギーでの電力供給を支えた風力発電機も現存する。現在よく見られるプロペラ型とは違い、少ない風でも発電可能なダリウス型装置。

たまに違った色を見かけますが、あれはどういう時に変更しているんですか?

錨マークの方だけですがブルーになっていることがあるかと思います。当初はオリックスブルーウェーブさんとの話の中で「オリックスが勝った時に青にしようか」ということから始まりました。現在はヴィッセル神戸さんが勝った日、国民の祝日、神戸まつりの日に色変更を行っています。

街の様々な場所から見える電飾ですがおすすめのスポットはありますか?

錨山は鯉川筋から見上げるのが好きですね。あとはちょっと距離を置いて、ポートアイランドの方から見ますと「北前船」も含めて電飾全体が見れるのでおすすめです。点灯時間は日没~23時までなので、その時間は神戸のシンボルを見上げてもらいたいですね。

今や神戸の風景に欠かせない市章山や錨山ですが、想像以上に長い歴史があったことに驚きました。松の木~電球~LEDという変遷のエピソードも面白い話でしたね。今回見学させて頂いた照明施設周辺は、歩くのも大変なほど急斜面ですが、ほんとうに素晴らしい眺めですので、ハイキングにぜひ。(山阪)


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